心理療法の終わりについて
「心理療法はいつ終わるのですか?」
心理療法を始めたばかりのクライエントさんから寄せられる質問のなかで、
代表的なものの1つではないでしょうか。
心理療法には少なくないお金がかかりますので、終わりはいつになるのか確認
してみたいとお考えになるのも当然ではないかと思います。
通常、クライエントさんは現在あるいは以前から困っている事柄やお悩みを抱えており、
そのことが来談の理由となっています。教科書的にはそのお悩みが解消すれば心理療法は終了となります。
しかし実際のところ“心理療法の終結”への考え方にはクライエントさんのお悩みの性質
および心理療法家が依って立つ学派によって相当に幅があります。
基本的にはクライエントさんが抱えるお悩みは、何らかの問題への対処行動あるいは自助努力という
側面があります。ある問題に対して心が何とか状況を変えようと働き、対処行動が形成されます。
例えば、過重労働で生じる抑うつは、心がこれ以上の負荷を防ぐために心的機能を落としている状態
(心を壊れないようにするための対処)とみることができます。
このような対処行動にはある種のパターンがあります。
つまり人は皆、対処行動のパターンを持っていて、それを使い続けていると言えます。
またそれは年月を経て洗練され見えにくくなっていることもあります。
心理療法によってこのパターンがセラピストに理解され、ご自身でも認識されることによって
気持ちはぐっと楽になります。パターンへのこだわりが緩み、遊びや余裕が生まれてきます。
このとき症状が軽減したとすれば、ひとつの終結の目安となるでしょう。
あるいはパターンを認識できたとしても、知らず知らずのうちにそのパターンを演じてしまう
ということも多々あります。パターンは別の形で(主に面接室内でセラピストを相手にして)現れます。
人間はすぐに変わることが難しいのである程度繰り返し、パターンを認識していく必要があるという考え方です。
これを集中的に、また時間をかけて行う場合には終結まで時間がかかることになります。
しかし、この場合ですと再発の危険性は下がります。
このように、心理療法の終結には様々な答えがあります。
心理療法を受けておられて終結が気になっている方は、ぜひその疑問を担当のセラピストに伝えてください。
そして率直に話し合っていただけたら幸いです。