メタ認知療法②
今回は、前回と大体同じ話を少し難しい専門用語を使いながら説明しています。
メタ認知というのは自分の考え方に対する考え方で、自分の考え方に対する信念を
「メタ認知的信念」と呼びます。
心配をやめられない人の場合、「心配していることを考え続けることで良い結果が生まれる」
という信念と、「心配し始めたら止められない、自分にはどうにもできない」という信念を両方
持っているために、何か不安なことがると心配を始めてそれを止められない悪循環に
自ら入り込んでしまいます。
このように、自分の頭の中のこと(心配)に注目し過ぎるのが「自己注目」です。
自己注目を繰り返すことで、「認知注意症候群(Cognitive Attentional Syndrome :CAS)」
不安とうつを維持し、持続させる中核的な役割を担っていると考えます。
「CAS」の症状は、主に以下の3つの特徴を有しています。
①注意バイアス
:心配しているもの、不安に感じている事柄に過剰に注意を向けてしまうこと
②反復的思考
:何をしている時でも常に心配事を考え続けてしまう
③症状を悪化させるだけの対処行動
:問題に直面するのを避ける回避行動や、思考抑制(無理やり考えるのを抑えようする。
かえって心配や反芻が強まることが多い)
「CAS」上記の特徴を通して、メンタル症状を維持させたり、場合によってはさらに悪化させたりします。
一方で、「CAS」とは対照的な状態が「距離を置いた注意深さ(Detached Minfulness :DM)」です。
言葉の通りですが、「CAS」が言わば心配事などの自分の内の部分に過剰に注意が向いてしまって、
それにすっかり捉われてしまっている状態であるとしたら、「DM」はそのようなうちの部分とは適度な
距離を取って、適度に関心をむけつつ、しかしそれに捉われてしまうことなく幅広く外にも意識を向け
変えることが出来る状態と言えるでしょう。
大雑把に言うと、メタ認知療法の目的は、心配事を繰り返し考えることだけにすっかり捉われてしまって
いる状態(CAS)から、心配事とは適度な距離を取って、捉われることなく付き合えるようになる(DM)ことです。
では、どうやったらそのようなことが出来るのでしょうか?
いくつかのワークを紹介できたらと思いますが、また次回、3回目に続きます。
Lear More「うつ病の集団認知行動療法」次回開催日のお知らせ
「うつ病の集団認知行動療法」の次回開催が決定しました。
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Lear More心配とメタ認知 メタ認知療法①
コロナウィルス感染拡大を防止するため、日常生活に様々な制限が加えられるようになって
もう3年目となりました。感染拡大が落ち着かない中で、ロシアによるウクライナ侵攻という
大きなニュースが連日報道されるようになりました。
このような世の中で、心配するなという方が無理な話かもしれませんが、
心配というのはとても辛いものです。
心配事は私たちが起きてから眠りにつくまで四六時中頭の中に付きまとい、
あれが片付いたら今度はこっちと、尽きることが無いように感じます。
さて、最近では「メタ認知」という言葉がよく話題に上がります。
お聞きになったことがある方もおられるかもしれません。
「メタ認知」について、心理療法の世界では「メタ認知療法」というアプローチが
2010年前後から注目されるようになりました。「認知」というのは私たち人間が
普段生活している中で頭の中に浮かぶ様々な考えや考え方で、1日のなかでも膨大な数の
認知が私たちの頭の中に生まれては消えていきます。
「メタ認知」というのは、ちょっとややこしいですが、そういった自分の考えや考え方に
関する考え方、ということになります。
「今はこれを考えないとダメなんだ」「恐れている事態を避けるためには考えなければ
いけない」など、自分が考えること自体について何かしら考えることを言います。
心配している内容それ自体については、それがどんな恐ろしい結末になりそうか、
恐ろしい結末を避けるためにどんな対処をするべきかなどなど、私たちは毎日十分に
考えているでしょう。
ではちょっと視点を変えてみて、そんな風に「心配事を考え続ける」ことの
メリットについて考えてみたことはあるでしょうか?
心配がやめられない私たちは、「心配事を考えていけば何か事態をマシにするような
解決策が出てくるはず」「心配事を考え続けた方が恐れていることを避けられる」といった
信念を心のどこかにもっていると言われています。
そのために何か不安になる度に、まるで当たり前のように心配を始めるのですが、
心配を続けると恐れているようなマイナスな予測ばかりに過剰に意識が向いてしまって、
ネガティブな精神状態がどんどんエスカレートしてしまう悪循環に捉われてしまいます。
これまでに、心配している事柄については、もう十分に考え続け、心配し続けてきたのでは
ないでしょうか。
もしそれで気分が改善されないのであれば、今度は少し視点を変えて、
「こんな風に必ず心配するけど、自分が心配する(という手段をいつも使う)ことの
メリットって何かあるだろうか?」と、自分のメタ認知に焦点を当ててみましょう。
Lear More「あなたのまわりのソーシャルサポート」
以前取り上げたポリヴェーガル理論でも「社会的関わりシステム」という言葉が出てきましたが、
人間という生き物は常に集団の中にあって、人生における様々なトラブルや危機を他者と支え合い
ながら生きてきました。
そのような周囲の他者からの支援のことをソーシャルサポートと呼びます。
ソーシャルサポートが得やすい状態にある人は、そうでない人と比べて困難な状況にあっても
健康な状態を維持しやすいことが分かっています。
ソーシャルサポートには以下の4種類の機能があると言われています。
情報提供機能:問題の解決に必要な情報を提供する
情緒的機能:気持ちに寄り添ったり共感する
道具的機能:問題解決の具体的・道具的な助け
評価機能:自分の行動に適切な評価を与える(褒めたり改善点を指摘する)
あなたが困った時、どんなソーシャルサポートが思い浮かびますか?
身近な存在だと家族や親友、やや遠くなると遠い親戚や離れた友人、かつての恩師など。
SNSでのつながりは、親密さなどによって近いソーシャルサポートにも遠いサポートにも
なるかもしれません。困っている状況によって、どのソーシャルサポートが有効かというのも
変わります。意識できるソーシャルサポートがあれば、困った時に相談したり助けを
求めてみると良いでしょう。
「ソーシャルサポートがある」というのは、単に自分の身近に他者がいることではありません。
普段生活している中では、近くに家族がいて、同級生や先生、同僚や上司が居ます。
しかし、その人たちからのサポートを期待できない場合もあるでしょう。
それだけでなく、身近な人間関係こそが主要なストレス因となる場合も
私たち人間にとってはよくあることです。
仮に身近な人との関係が良好であったとしても、自分の悩みや困り事を、相手に相談したり
打ち明けたりと言うのは、それほど簡単なことではありません。
状況や悩みの内容によって、身近なソーシャルサポートを利用できないこともあるでしょうし
身近だからこそ言えないこともあるでしょう。
「こんなことを話して相手の負担になってはいけない」という思いもサポートから自分を遠ざけます。
カウンセリングはそのようなときの一つの選択肢かもしれません。
カウンセリングでは基本どんなことでも話して良く、尚且つ自分のプライベートな関係の
どこともつながっていない特殊な場所です。
悩みがあるけれども、周りのサポートが見当たらない、サポートはあるのだけれども
状況や内容のために相談することができない。
そんな時には、利用できる新たなソーシャルサポートを作るつもりでお気軽にお問い合わせください。
(参考文献:久田満・飯田敏晴(編著) 2021 コミュニティ心理学シリーズ第1巻 心の健康教育 金子書房)
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