コンパッションを取り入れた認知行動療法って?
「同情するなら金をくれ」という有名すぎる言葉のおかげで、「同情」という言葉は随分価値下げされて
しまったんじゃないかと思います。
コロナウィルスの感染拡大が終息したわけではありませんが、各種イベントの復活、マスク着用の緩和など
コロナウィルス感染への意識はこれまでとだいぶ変わった感があります。
そんな中、当オフィスでもかなり開催間隔を空けていた集団認知行動療法プログラムを積極的に
開催していくことになりました。
現在、「コンパッションを取り入れたうつ病の集団認知行動療法(https://www.komachicp.com/cbgt/)」の
参加者を募集中です。
このプログラムは少し前から開催していて、当時もコンパッションについて触れています。参照
「コンパッション」とは「慈悲」とか「思いやり」と訳されることが多いですが、仏教で用いられる
「慈悲」という言葉が起源となっています。
「生存者が苦しんでいるのに同情する時が「悲」であり、苦を抜いてやろうと決心する時が「慈」なのである。」
(中村元『慈悲』講談社学術文庫)
この定義は、ほとんどそのまま心理学で言う「コンパッション」の定義と一緒です。つまり、悲しいとか苦しいとか、
そういった思いや感情についてきちんと向き合って(「悲」)、向き合ってちゃんと感じるからこそ心の中に沸いてくる
「なんとかしてやりたい」という素直な思いに従って「なんとかしてやろう」と決心すること(「慈」)です。
最近特に注目されている「セルフ・コンパッション」は、実はもうちょっと色々な要素を取り込んだ定義なのですが
ここのところは大元の起源として共通する部分のはずです。
悲しいとか、苦しいとか、悔しいとか思ってしまうことで、自分を非難したり、そう思わせる世界を非難したりすると
いつまでもそこに留まってしまいます。
「コンパッションを取り入れたうつの集団認知行動療法」では、このコンパッションをちょっとずつ理解して
ちょっとずつ実践し、自分の中にコンパッションを育むことを目指すプログラムです。
コンパッションの実践には、
「他者にコンパッションを向ける」
「他者からのコンパッションを受け取る」
「自分にコンパッションを向ける」の3つの方向性が存在します。
認知行動療法は自分の考え方、行動のパターンについて理解して、それを(必要なら)より「合理的」
「バランスの取れた」ものに変えていくことを目指します。
一方でコンパッションのプログラムは、その考え、行動のパターンを、より「コンパッション」なものに
していくことが目標です。そこには、自分の「考え」や「行動」に留まらず、自分の苦手とする「感情」に
ついても逃げずに向き合うという勇気が伴います。
そのため心理学の世界では、コンパッションの要素は特に「自己批判」「恥」が強いばかりに様々なセラピーの
効果が芳しくない人々に有効な方法だと考えられ、考案されてきました。近年では「怒り」などの自分で
扱うことが難しい感情に対するアプローチとしても積極的に取り組まれています。
「コンパッション」という言葉がどうも肌になじまないな、と感じる人こそ、このプログラムが何かに役立つ
きっかけになるかもしれません。