コンパッションはトーンに宿る
コンパッション(慈悲/思いやり)は、これまでも何度か取り上げてきましたが、
最近ではチームをまとめるリーダーにとっても大切なスキルと言われるようになってきました。
コンパッションには、
「相手にコンパッションを向ける」
「相手からのコンパッションを受け取る」
「自分にコンパッションを向ける」
以上3つの方向性があると言われていて「自分にコンパッションを向ける」ことを特に
「セルフ・コンパッション」と言います。セルフ・コンパッションが注目されることが多いですが、
3つの方向性を見てみると、リーダーにとってはそのどれもが大切なものであるように思われます。
チームと呼ぶと堅苦しいですが、相手に思いやりを持つこと、また、相手からの思いやりに気が付いて
それを大事に受け取ることなどは、夫婦関係、親子関係、友人関係などでもお互いのQOLを
高めるために大切な要素と言えるでしょう。
さて、そうは言っても「コンパッション」「慈悲」「思いやり」どの言葉をとってみても
なんとなくは分かるけれど、とらえどころがなく、「どうやったらおもいやりって示せるんだろう」と
悩んでしまうのではないでしょうか。
心理学の世界にコンパッションを取り入れたイギリスの心理学者ポール・ギルバート博士は
考え方を切り替えたり、これまでとは違った考え方をしたりすることを促すカウンセリングに
取り組んでいる時、バランスの取れた考え方を持てたはずのクライエントさんなのに
気持ちが全く変わっていないことに気が付きました。
実はバランスの取れた考え方を思い付きはしたものの、頭の中に響くその考えの“トーン”が
これまでのネガティブな考えの時のものと全く変わっていなかったのです。
トーンというのは不思議なものです。「大丈夫だよ」という言葉を一つとってみても
① 何度も何度も「大丈夫なの?」としつこく念を押されて怒って返す「大丈夫だよ!」
② まったく大丈夫じゃないけど後には引けないと思い詰めて絞り出す「大丈夫だよ」
③ 落ち込んでいる大切な人を慰めるために、心から伝える「大丈夫だよ」
頭の中で響くトーンは全然違うのではないでしょうか。
(『はぁっていうゲーム』と似ているかも知れませんね)
トーンだけでなく、表情も、声の大きさ、速さまだ違っているのではないかと思います。
コンパッションのワークをするときには、自分や、相手に言葉をかける時にも
トーン、表情、大きさや速さに注目して、思いやりを持ったトーンで話すように試していきます。
自分や相手にどんなふうに思いやりを示していいか分からない時には、
自分の言葉のトーンや表情に注目してみましょう。
そして、心から思いやりを持った自分だったら、どんなトーンで、どんな表情で話すかイメージしてみましょう。