“不安”と認知(考え)
不安の方程式
不安はどんな時に大きくなるのでしょうか。不安の強さを導き出す「不安の方程式」をご
紹介します。
例えば「もし出かけた先でライオンに遭遇したら」と考えてみましょう。
ほとんどの人はライオンには力でも足の速さでも勝てないでしょうから、本当に遭遇してしまったら
脅威は100とか、とても高くなるかもしれません。けれど、日本の街中にはライオンはまずいませんから
生起確率は低く「そんなことありえないよな」と思うのではないでしょうか。
けれど、これがもし「自宅近くの動物園からライオンが脱走した」というニュースの後であれば
生起確率がぐっと上がって、とても不安で出かけられなくなるかもしれません。
一方で、そんな風にこの方程式の分子がかなり高かったとしても
「自分は足が速いし、雄ライオンは怠け者だし、一目散に逃げれば逃げ切れるだろう(対処可能性)」とか
「警察もたくさん来ているからきっと守ってくれるだろう(サポート資源)」という風に思えれば
分母が大きくなる分、不安は小さくなるでしょう。
この方程式はそれ以外にも、嫌いな虫に遭遇する不安、事故に巻き込まれる不安、皆の前で恥をかく不安、
などに関しても同じです。
いつも不安が高い人をこの方程式で考えると、実際よりも分子の数字をかなり大きく、また、分母の数字を
かなり小さく見積もってしまう状態にあるのかもしれません。つまり“認知=考え方” が影響しているのです。
今、ご自身の不安に思っている事柄を思い浮かべてこの方程式に当てはめてみましょう。
どのくらいの数字になるでしょうか?
不安と認知行動療法
不安に対する認知行動療法は、このような不安の脅威や実現可能性を過剰に大きく見積もってしまうことや
それが起きた時の対処可能性を過剰に小さく見積もってしまう考え方のクセを、よりバランスの取れた
考え方にしていくための方法です。
もし、ご自身の不安に思っていることを「不安の方程式」に当てはめた時に「分子がすごく大きな数字になる」
また「分母がほとんどなくなってしまう」という方は、考え方=認知の観点から
ご自身の不安を見つめ直してみることが役立つかもしれません。
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どうして先延ばしをしてしまうのか
先延ばし=procrastinationは、心理学の中でも昔から繰り返し研究されてきました。
先延ばしには肯定的な面と否定的な面があると言われています。
先延ばしのこころへの影響
先延ばししている最中は、本人にとって肯定的な影響が得られます。
嫌なことを忘れられたりリラックスできたりします。
しかし、先延ばしは先延ばしが終わった後に
否定的な影響が出てくる傾向があると言われて
います。先延ばしをしている間は嫌なこと、
苦しいことを忘れることができますが
その分、後になって
「あの時ちゃんとやっておけば」と
後悔したり時間が無くなって慌てたりしてしまうといったことに繋がるのです。
また、先延ばしの否定的な影響は、先延ばしが繰り返されるほどより強くなっていく
ということが明らかになっています。
肯定的な先延ばしもある
一方でネガティブな結果に陥りにくい先延ばしもあることが分かっています。
「active procrastination =積極的先延ばし」と呼ばれるこの先延ばしは、簡単に言えば
「ギリギリに短時間で詰め込んだ方が集中できるんだ」と思って積極的に先延ばしを選択することです。
まだ期限まで余裕のあるしばらくの間は、仕事に手を付けないのは普通の先延ばし(受動的先延ばしとも呼ばれます)
と同じですが、先延ばし後であってもネガティブな影響を生じず、期限までにきちんと作業に取り組むことが
出来ると言います。やりたくないからと思って結果的に先延ばしてしまうのではなく、先延ばしを
1つの戦略として使っているとも言えるかもしれません。
先延ばしするクセをなくすには
肯定的な先延ばしもあるとはいえ、一般的な先延ばしは繰り返すほどに否定的な影響が強くなりますから、
その流れをどこかで断ち切ることができると良いに越したことはありません。
まずはやるべきことを、いつどのようにやるかを明確にすることが大切です。「とにかく家のことを頑張る」だと、
なにをどう頑張れば目標を達成したことになるのかが曖昧で行動を起こそうと思えません。
「テーブルの上を片付ける」など、まず具体的な第一歩を設定しましょう。この時注意するべきなのは
いきなり高い目標を設定しないことです。
「先延ばし」は意外にも「完璧主義」の人に多いと言われています。完璧主義の人は目標を知らず知らずに
高く設定し過ぎてしまうために、最初の一歩を非常に重く感じられてしまうところがあるようです。
先延ばし癖のある方は、自分が設定した目標を「こんなに低くていいの?」と感じるくらいに小さく
感じられる目標にしてみましょう。すると、最初の一歩が踏み出しやすくなるかもしれません。
こまち臨床心理オフィスでは来談者様のお困りごとをお聞きして
その方に合ったカウンセリングの方法をご提案いたします。
Lear More心理療法の終わりについて
「心理療法はいつ終わるのですか?」
心理療法を始めたばかりのクライエントさんから寄せられる質問のなかで、
代表的なものの1つではないでしょうか。
心理療法には少なくないお金がかかりますので、終わりはいつになるのか確認
してみたいとお考えになるのも当然ではないかと思います。
通常、クライエントさんは現在あるいは以前から困っている事柄やお悩みを抱えており、
そのことが来談の理由となっています。教科書的にはそのお悩みが解消すれば心理療法は終了となります。
しかし実際のところ“心理療法の終結”への考え方にはクライエントさんのお悩みの性質
および心理療法家が依って立つ学派によって相当に幅があります。
基本的にはクライエントさんが抱えるお悩みは、何らかの問題への対処行動あるいは自助努力という
側面があります。ある問題に対して心が何とか状況を変えようと働き、対処行動が形成されます。
例えば、過重労働で生じる抑うつは、心がこれ以上の負荷を防ぐために心的機能を落としている状態
(心を壊れないようにするための対処)とみることができます。
このような対処行動にはある種のパターンがあります。
つまり人は皆、対処行動のパターンを持っていて、それを使い続けていると言えます。
またそれは年月を経て洗練され見えにくくなっていることもあります。
心理療法によってこのパターンがセラピストに理解され、ご自身でも認識されることによって
気持ちはぐっと楽になります。パターンへのこだわりが緩み、遊びや余裕が生まれてきます。
このとき症状が軽減したとすれば、ひとつの終結の目安となるでしょう。
あるいはパターンを認識できたとしても、知らず知らずのうちにそのパターンを演じてしまう
ということも多々あります。パターンは別の形で(主に面接室内でセラピストを相手にして)現れます。
人間はすぐに変わることが難しいのである程度繰り返し、パターンを認識していく必要があるという考え方です。
これを集中的に、また時間をかけて行う場合には終結まで時間がかかることになります。
しかし、この場合ですと再発の危険性は下がります。
このように、心理療法の終結には様々な答えがあります。
心理療法を受けておられて終結が気になっている方は、ぜひその疑問を担当のセラピストに伝えてください。
そして率直に話し合っていただけたら幸いです。
Lear More認知行動療法 その2
前回「認知行動療法 その1」の続きです。
認知行動療法には宿題があります
認知行動療法ではセッションの終わりに持ち帰る宿題について考えます。
そして次回のセッションまでの間にご自身で取り組んでみます。
これは単にセッションの中だけでCBTを扱うのではなく、CBTを日常生活の中に
持ち帰っていただくことで自分自身のスキルとして使えるようになることを
目指しているからです。
もちろん、無理なものではなく取り組めそうな範囲の宿題を考えてそれを実行してみます。
失敗や成功よりも、それをしてみるとどんな結果になるのか実験のようなつもりで取り組んでいきます。
例えばこのような方に…
・物事を悲観的に考えたり、自分を責めてしまうクセを直したい。
・不安や緊張が強くなって普段のようにリラックスできない。
・復職準備の一環として復職した際の心構えを作りたい。
・苦手な人がいるがどのように対応して良いかわからない。
・薬物療法で良くなってきたが辛い気持ちに自分で対処できるようになりたい。
・薬を減らしていきたい。
集団認知行動療法とは
集団認知行動療法(Cognitive Behavior Group Therapy:CBGT)は、CBTを複数人の
グループメンバーと一緒に行っていく方法です。
似た悩み事を抱えている人と問題を共有し、一人では考えつかない解決策に
気づけることは、CBGTの大きなメリットの一つです。
当オフィスでは、主にうつ病、うつ状態の方を対象としたCBGTを3~6名という
比較的少人数の固定メンバーで行っております。
毎週1回90分、全13回のセッションの中では、自分自身で認知行動療法に
取り組みながら時にはメンバー同士で検討や発表をし合い問題の解決に向けてみんなで考えていきます。
個人でじっくり取り組みたい、グループで話し合ってみたいなど、様々なお考えがあることと思います。
個人、集団それぞれに特徴があるので、どちらが自分に合っているかわからない、
と言う方はぜひお気軽にご相談ください。
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