自尊感情は高めなくても良い!?自信をつけるよりコンパッションを高めよう。
カウンセリングの中で「自尊感情を高めたい」「自信を持ちたい」というお話はよく聞きます。
「自己肯定感」という言葉を上げられる方もおられます。
・自分に自尊感情が足りないから、周りの人のように生きられない。
・自信が持てないから新しいことに挑戦する勇気が持てない。
・自己肯定感が無いから、ネガティブなことばかり考えてしまう。
だからとにかく自信をつけなければと躍起になる人は多いように思います。
周りで活躍している人が、みんな自信に満ちているように見えることが一層自分の焦りを煽ります。
しかし、そのように「自信を付けること」を目的にして行動するモチベーションを上げられる人が
どの程度いるのでしょうか?
自尊感情、自信、自己肯定感を高めようと思って本当に高められたことのある人がどのくらいいるでしょうか?
そもそも、自信は本当につけなければいけないものなのでしょうか?
「自尊感情」は「自己に対して肯定的な評価を抱いている状態」と言われており、
定義に「評価」(別の定義では「価値」などとも)の言葉が組み込まれている通り
どうあっても他者との比較や評価的視点から自由でいることは出来ません。
「他者と比較しないで自分の立てた目標だけを見て自信にしなさい。」などというのは、
人間が社会から切り離されては生きていけない生き物である以上そもそも不可能な
アドバイスと言えるでしょう。もちろん自尊感情はあるに越したことはないですが
それは「評価」である以上、周囲の状況などによって変化し揺らぐはずのもので
常に高い状態に安定しているなどあり得ません。
しかし「自尊感情が持てなくてつらい」というのもまた確かなことでしょう。
その場合、自尊感情が持てないことの何が辛いのでしょうか?
きっと、自分を認められない、他者のことを認められない、気持ちが落ち着かない、
というところにあるのではないでしょうか。
しかし、自分や他者を認めながら心のバランス調整も兼ね備える力は、自尊感情でも
自信でもなく「コンパッション」(※コンパッションについて詳しくはこちらのブログへ)
にあるのです。
あなたの身の回りに、もしいつも自信があって良いな、ああいう人になりたいなと思える人が
いるとしたら、おそらくそれは単に自信がある人ではなくコンパッションのある人ではないでしょうか?
彼らの、自分にも他者にも寛容で思いやりがあり、落ち着いている様子が
まるで自信にあふれているように見えるのではないでしょうか。
コンパッションは誰にでもある力で、いつからでも育てていけることが研究により明らかになっています。
当オフィスではカウンセリングの方法の一つとして、コンパッション・フォーカスト・セラピーに取り組んでいます。
コンパッションを高めていきたいと言う方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
特に「自尊感情を高めなければ」と思う人こそコンパッションに目を向けてみるのも、
自分の辛さを取り去るための意外な一つの選択肢になるかもしれません。
Lear More「あなたのまわりのソーシャルサポート」
以前取り上げたポリヴェーガル理論でも「社会的関わりシステム」という言葉が出てきましたが、
人間という生き物は常に集団の中にあって、人生における様々なトラブルや危機を他者と支え合い
ながら生きてきました。
そのような周囲の他者からの支援のことをソーシャルサポートと呼びます。
ソーシャルサポートが得やすい状態にある人は、そうでない人と比べて困難な状況にあっても
健康な状態を維持しやすいことが分かっています。
ソーシャルサポートには以下の4種類の機能があると言われています。
情報提供機能:問題の解決に必要な情報を提供する
情緒的機能:気持ちに寄り添ったり共感する
道具的機能:問題解決の具体的・道具的な助け
評価機能:自分の行動に適切な評価を与える(褒めたり改善点を指摘する)
あなたが困った時、どんなソーシャルサポートが思い浮かびますか?
身近な存在だと家族や親友、やや遠くなると遠い親戚や離れた友人、かつての恩師など。
SNSでのつながりは、親密さなどによって近いソーシャルサポートにも遠いサポートにも
なるかもしれません。困っている状況によって、どのソーシャルサポートが有効かというのも
変わります。意識できるソーシャルサポートがあれば、困った時に相談したり助けを
求めてみると良いでしょう。
「ソーシャルサポートがある」というのは、単に自分の身近に他者がいることではありません。
普段生活している中では、近くに家族がいて、同級生や先生、同僚や上司が居ます。
しかし、その人たちからのサポートを期待できない場合もあるでしょう。
それだけでなく、身近な人間関係こそが主要なストレス因となる場合も
私たち人間にとってはよくあることです。
仮に身近な人との関係が良好であったとしても、自分の悩みや困り事を、相手に相談したり
打ち明けたりと言うのは、それほど簡単なことではありません。
状況や悩みの内容によって、身近なソーシャルサポートを利用できないこともあるでしょうし
身近だからこそ言えないこともあるでしょう。
「こんなことを話して相手の負担になってはいけない」という思いもサポートから自分を遠ざけます。
カウンセリングはそのようなときの一つの選択肢かもしれません。
カウンセリングでは基本どんなことでも話して良く、尚且つ自分のプライベートな関係の
どこともつながっていない特殊な場所です。
悩みがあるけれども、周りのサポートが見当たらない、サポートはあるのだけれども
状況や内容のために相談することができない。
そんな時には、利用できる新たなソーシャルサポートを作るつもりでお気軽にお問い合わせください。
(参考文献:久田満・飯田敏晴(編著) 2021 コミュニティ心理学シリーズ第1巻 心の健康教育 金子書房)
Lear More行動を変えて気持ちや気分の改善を試みよう!―行動活性化のススメ―
みなさんは、気持ちが落ち込んだまま、なかなか改善せず困ったことはありませんか?
また、何とか気分を変えようと思っても、なかなか上手くいかずに苦労したことはありませんか?
今回は、気持ちや気分を変えるための方法として『行動活性化』をご紹介します。
①気持ちと行動は,どのように関係しているのでしょうか?
ポジティブな感情には、行動の範囲を広める力があります。逆に、ゆううつや不安などの
ネガティブな感情を経験すると、ずっと考え込んだり、同じ失敗を避けようとしたりして
行動の範囲が小さくなってしまいます。
そのため、ネガティブな感情を適宜ポジティブな感情に切り替えようと、人は考え、
取り組もうとしていきます。
さて、みなさんは「気持ち・気分」と「行動」のどちらが変えやすいと思いますか?
正解は➡「行動」です。
気持ちや気分は簡単には変えることができませんが、行動は比較的簡単に変えることができます。
②どうやったら気持ちや気分を変えられるでしょうか?
気分や感情が改善するのを待っていても、いつになるかは分かりません。
逆に、先に行動を変えれば、感情や気分の変化もそれについてくるかもしれません。
なので、気分にかかわらず行動することが大切です。つまり、活動することを通して
気分の改善を図っていきます。やる気が起きるまで行動をしないのではなく、
行動を通してやる気を呼び起こしていくように心がけてみましょう。
③では、具体的にどんな行動をすれば良いでしょうか?
まずは、ご自身が「過去に取り組んだことある、気分が改善した行動」を思い出してみましょう!
新しいことを探したり始めたりすることは、時間がかかったり慣れるまでに苦労が必要になってしまう。
そのため、今までやったことのある行動から選んで、取り組んでみることがポイントです。
〈何かをする行動〉
❖好きなことをする(漫画を読む、映画を観る)
❖整理整頓をする(カバンの中を整理する)
❖先延ばしにしていたことを片づける
❖人と連絡する(長らくあっていない友人に電話する)
❖運動をする(ウォーキング、ストレッチ、ヨガ、筋トレ)
❖手作業をする(掃除をする、料理をする)
❖芸術的な作業をする(絵を描く、楽器を演奏する)
〈何もしない行動〉
❖何もしない(ぼーっと空や景色を眺める)
❖リラックスする(ゆっくり風呂に入る、入浴剤を入れる)
❖暗い気分にそぐわない、実際にできそうなことをする(持っている一番明るい服を着る、鼻歌を歌う、スキップする)
❖楽しそうな人を見つけて同じ行動をする
④行動するときのポイントと注意
・すぐに簡単にできそうな、ほんの少しの小さなことをから取り組んでみてください
・具体的に,可能な範囲で,計画を立ててみてください(いつ?どこで?誰と?どのように?どこまでやるか?)
・大きくて難しそうな行動は、なるべく小さく分けて1つずつ取り組んでみてください
(例:家の掃除をする計画を立てる→机の上を片づける→ひとつの部屋を片づける)
今回は、行動活性化について少しご紹介しましたがいかがでしょうか。
何か些細なことからで構いませんので、自分の気持ちや気分が切り替えたいと思った時に
ぜひ取り組んでみてください。
そして実際に取り組んだ時に「うまく気持ちや気分が切り替えられた行動」
「喜びや達成感が増えた行動」は、これから大事にしていきましょう。
ここから、あなた自身の「オリジナルの気分転換の方法」を探していくための良いスタートが
きれたのではないでしょうか?
しかし、物事はそう簡単にうまくいかないこともあります。
「どうしても気持ちが落ち込んでしまって変えることが難しい」「たくさん取り組んでみても上手く
気持ちがきりかえられない」など、困ってしまったら、お1人で考え込まずにしてください。
ご自分1人ではどうにもならない時には、誰か周囲の人に相談する必要があるでしょう。
カウンセリングをその相談の手段の1つとしてお役に立てる場合があります。
まずは、お気軽にお電話等で当オフィスにご連絡してみてください。
Lear More