認知行動療法 まとめ
これまでのブログで掲載してきた認知行動療法関連の記事をまとめました。
TVやネットなどで頻繁に取り上げられるようになって久しい認知行動療法ですが、
実際にはどんなことをやるのでしょうか?
認知行動療法が自分の役に立つならやってみたいと思ったら、以下の記事がお役に立つかもしれません。
認知行動療法って?
認知行動療法がどんなものかをごく簡単に紹介しています。
考え方のクセ
認知行動療法で焦点を当てることになる「考え方のクセ」には、よく知られた典型的なパターンが
いくつもあります。
それは誰でも持っている自然なものですが極端になりすぎると苦しくなっていきます。
どんなパターンがあるのか知って、自分の考え方と適度な距離で付き合えるようになりましょう!
・読心術
アプローチ
自分の考え方・行動の仕方のクセ、いつも捉われてしまうお決まりのパターンが見えてきたら
いよいよそれを変えていくためのアプローチです。ここでは代表的な2つの方法を紹介しています。
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考え方のクセ⑥ 情緒的理由付け
Aさんはこれから自動車教習所の仮免試験を受けるところです。ですがあまりの緊張と不安で心臓はバクバクで、
てのひらは脂汗でびっしょりです。その時Aさんはこう思いました。
「こんなに不安になる仮免試験はすごく難しくて恐ろしい試験だ。こんな試験絶対自分には無理だ。」
Bさんは自分の思い通りに動いてくれない部下に強い怒りを感じています。
「私をこんなに怒らせるんだから、それだけあいつは無能で何の存在価値もないヤツなんだ」
「情緒的理由付け」とは、自分の感じている感情(の強さ)を理由に物事を判断してしまうことで、
「感情的決めつけ」とも言います。
周りの人から「大丈夫だって」、「それは考えすぎじゃない?」といくら言われても、
「自分がこんな気持ちになっているのが何より明らかな証拠じゃないか」と思ってしまい、
なかなか他の考えが呑み込めないのも、情緒的理由付けの特徴です。
自分では気が付いていなくても、頭で考える力はいとも簡単に感情に流されてしまうものです。
以前「不安、不満、怒り などネガティブだと思われている感情の心理と重要性について」で、
ネガティブな感情が私たちが生きていくためにどんなに必要なものか触れました。
だから私たちは感情に振り回されながらも、その感情となんとかうまく付き合っていくしかありません。
そのために、強いネガティブ感情がいつまでたってもおさまらない時に、「情緒的理由付け」が
起こっていないか省みることは役に立つのではないでしょうか。
今感じている自分の感情の強さが、試験の合否や相手の無能さの理由になるでしょうか。
もしかしたら両者は全く関係無いかもしれません。
そう気が付いた時に、じゃあどうして自分がこんなに不安や怒りの感情を感じているのか、
はじめてその本当の理由に目を向けることができるかもしれません。
Lear Moreネガティブ思考と距離をとろう ~脱フュージョン~
あんなに暑かったのに気温は急に寒くなり、徐々に日が落ちるのも早くなりはじめ、
季節の変わり目は調子が安定しない、なんだか落ち込むという方が多い印象を受けます。
今日はそんなネガティブな気持ちや考えとうまくお付き合いするコツとしてACTを紹介しようと思います。
ACT(アクセプタンスコミットメントセラピー:Acceptance and commitment therapy)とは、
心理的な柔軟性を促進することを目的とした第3世代の認知行動療法と呼ばれるものです。
ACTでは柔軟なメンタルを促進する方法として6つの要素が大切とされていますが、
その一つの要素に“脱フュージョン”というものがあります。
何かの必殺技のようでカッコいい響きですよね。
私たちは常に何かを考えながら生活しているのですが、その考えが自動的に現実生活の
行動に多かれ少なかれ影響を及ぼしていることがあります(これを認知的フュージョンといいます)。
行動にプラスの影響がある考えであれば全く問題ないのですが、ネガティブな考えに
影響されてしまうと思うように動けず辛いですよね。
例えば、“自分はダメ人間だ”という考えが強い人は何かに挑戦してみたい気持ちが沸いても、
その思考にのまれてしまってせっかくのチャンスを逃してしまうなんてことがあるかもしれません。
ACTでは、思考をあくまで頭の中で勝手に作られている物語で、現実とは関係があるかどうかも
定かでない単なる言葉・音の羅列や繋がりにしかすぎないと考えます。
それらの思考に翻弄されずに自分と切り離して距離を置くこと、つまり、認知的フュージョンから
脱する“脱フュージョン”が大切とされています。
脱フュージョンをするための方法としては次のようなエクササイズがあります。
- 言い方を変えてみる:言葉の持つ意味やインパクトが薄れます
・邪魔をしている考えや言葉を何度も何度も早く繰り返し言う
例:だめにんげんだめにんげんだめにんげんだめにんげん…
・逆にものすごくゆっくりと言う
例:だーーーめーーーにーーーんーーーげーーーんーーー
・特徴的なキャラクターの口癖やフレーズのように言ってみる
例:僕ダメ人間なり~
・考えを好きな歌のリズムに乗せて歌詞にする
- ラベルを貼ってみる
・「~と考えた」「~という考えを持っている」を語尾につける
例:私はダメ人間“と考えた”、私はダメ人間“という考えを持っている”
・よく起こる思考や感情に名前を付けて擬人化する
例:あーまたダメ人間くんが大きな声で頭の中で何か言ってるな~、どんな顔で言ってるかな~
- イメージを使ってみる
・考えを空を漂う雲だと思って流れゆくのをイメージする
・考えを川を流れる葉っぱに乗せて流れゆくのをイメージする
・電車の貨物に思考を乗せてビュンと通り過ぎるのをイメージする
・トイレに考えを流すのをイメージする
どうでしょうか。アイデア次第でいろんなエクササイズができます。
かくいう私も文章を書くのがとっても苦手なので、この記事を書き始めた時には
上手に書けるかな…何書けば良いんだ!…読んでもらえるのかな…等々考えに飲まれ不安になり
手が進まなくなっていたので、最近友人がディズニーランドに行ったという話を思い出し
ミッキーマウスマーチのリズムにネガティブな思考を乗せて脱フュージョンのワークをしながら
書いていたのですが、気づけば不安が消えて今はちょっとわくわくした気持ちになっています。
こんな感じでいつでもどこでも手軽にできるものなので、自分にフィットするやり方を
ぜひ生活の中で取り入れてみてください。
とはいえ、なかなか一人で取り組むのが難しいことも多いと思います。
そんな時はカウンセラーと一緒に取り組むのがおすすめです。ぜひお気軽に
こまち臨床心理オフィスにお問い合わせください。
参考図書:ラスハリス(著)、岩下慶一(翻訳)「幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない:マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門」筑摩書房
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メタ認知療法③
前回の続きからですが、心配事を繰り返し考えることだけにすっかり捉われてしまっている
状態(CAS)から、いかにして心配事とは適度な距離を取って捉われることなく付き合える
ようになる(DM)か、そのためのワークのほんのいくつかをご紹介しましょう。
「ワークを始める準備」
心配は常にあって、そこには始まるきっかけなどないように感じるかもしれませんが、
ほんのちょっとした些細な事であってもそこにはきっかけがあるはずです。
まずそのきっかけを探してみましょう。
「心配先延ばし実験」
「心配は自分にはどうにもできない」というメタ認知的信念に挑戦してみましょう。
心配をして良い時間を、毎日家と職場までの道のりを歩いている時だけ、もしくは
その日のお風呂に入ている間の15分だけ、と決めましょう。
もし、心配が始まるきっかけに出くわしたら、そのまま心配を始めるのではなく
決めた時間までは心配を先延ばしするようにしましょう。もちろん、決めた時間内で
あれば、好きなだけ心配をして構いません。
「注意訓練」
心配に捉われる状態である「自己注目」から抜け出すために、
注目=注意を自分の意思で切り替えられるようになるためのトレーニングを行います。
このトレーニングは以下のステップで構成されています。
①選択的注意
今周りで聞こえる音に注意をむけます。沢山の音の中で、1分おきに何か特定の音
(自分にとって特別な意味を持たない音が望ましい)に注意を向け直していきます(6分間)。
②注意の転換
20秒ごとに、注意を向ける音を変化させていく練習です(6分間)。
③注意の分割
聞こえてくる物音全てに注意をむけます(3分間)。
上記ステップを通して、捉われることのない注意、柔軟な注意を身につけていきます。
この時大事なのは「ネガティブ思考が出てこないようにする」ことではなく
「ネガティブ思考が出てきても,別の集中したいことに集中できるようになる」ことだと
言われています。
つまり、ネガティブ思考をムリヤリ抑え込もうとするのとは違いますよ、と言うことです。
これは非常に大切で、ネガティブ思考が出てきて困っている時に、思考を抑えたくて注意訓練を
やるのではなく、普段から心を整えるための方法として取り入れていくことが大切ということです。
注意訓練に関しては注意を向ける音を提供してくれる動画がYouTube
(https://www.youtube.com/watch?v=PM1qWHKkpdA)に上げられていたりします。
そのようなものを活用してみても良いかもしれません。
参考文献:
今井正司 & 今井千鶴子. (2011). メタ認知療法 (< 特集> 認知/行動療法). 心身医学, 51(12), 1098-1104.
メタ認知療法②
今回は、前回と大体同じ話を少し難しい専門用語を使いながら説明しています。
メタ認知というのは自分の考え方に対する考え方で、自分の考え方に対する信念を
「メタ認知的信念」と呼びます。
心配をやめられない人の場合、「心配していることを考え続けることで良い結果が生まれる」
という信念と、「心配し始めたら止められない、自分にはどうにもできない」という信念を両方
持っているために、何か不安なことがると心配を始めてそれを止められない悪循環に
自ら入り込んでしまいます。
このように、自分の頭の中のこと(心配)に注目し過ぎるのが「自己注目」です。
自己注目を繰り返すことで、「認知注意症候群(Cognitive Attentional Syndrome :CAS)」
不安とうつを維持し、持続させる中核的な役割を担っていると考えます。
「CAS」の症状は、主に以下の3つの特徴を有しています。
①注意バイアス
:心配しているもの、不安に感じている事柄に過剰に注意を向けてしまうこと
②反復的思考
:何をしている時でも常に心配事を考え続けてしまう
③症状を悪化させるだけの対処行動
:問題に直面するのを避ける回避行動や、思考抑制(無理やり考えるのを抑えようする。
かえって心配や反芻が強まることが多い)
「CAS」上記の特徴を通して、メンタル症状を維持させたり、場合によってはさらに悪化させたりします。
一方で、「CAS」とは対照的な状態が「距離を置いた注意深さ(Detached Minfulness :DM)」です。
言葉の通りですが、「CAS」が言わば心配事などの自分の内の部分に過剰に注意が向いてしまって、
それにすっかり捉われてしまっている状態であるとしたら、「DM」はそのようなうちの部分とは適度な
距離を取って、適度に関心をむけつつ、しかしそれに捉われてしまうことなく幅広く外にも意識を向け
変えることが出来る状態と言えるでしょう。
大雑把に言うと、メタ認知療法の目的は、心配事を繰り返し考えることだけにすっかり捉われてしまって
いる状態(CAS)から、心配事とは適度な距離を取って、捉われることなく付き合えるようになる(DM)ことです。
では、どうやったらそのようなことが出来るのでしょうか?
いくつかのワークを紹介できたらと思いますが、また次回、3回目に続きます。
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