レジリエンス(精神的回復力)を高めるためのカウンセリングという選択
レジリエンスとは、「困難で脅威的な状況 にもかかわらず、うまく適応する能力・過程・結果」とされ
最近国や地方、企業が積極的に取り組んでいるSDGs(持続可能な開発目標)の中にもよく出てくる言葉です。
SDGsの中では、持続可能な世界にするための強さや対処力といったニュアンスがありそうですが
心理学の中で使われると、特に「精神的な回復力」という意味になります。
ストレスを感じない強さというよりも、ストレスなど辛いことがありながらも、そこから自分で
立ち直って、乗り越え適応する力がレジリエンスと言えるでしょう。
そうは言っても人生には乗り越えるのがとても難しい辛いことがたくさんありますし、なかなか自分で
レジリエンスがあると言える人は少なくて、多くの方は「自分はレジリエンスが低いな」と感じられる
かもしれません。
近年の心理学ではこのレジリエンスを資質的な要因と、獲得的な要因との2つの要因から理解する考え方
があり、以下の図のようにまとめられています。
資質的というのは「生まれ持った」という意味で、獲得的は、後天的に獲得する要因という意味です。
それぞれ、どちらかがあればいいと言うわけではありませんが、レジリエンスと言うのは、持って
生まれた資質で決まるというわけではなく、生きていく中で獲得していく、あるいは”獲得できる”要素も
あると言うことです。
レジリエンスの獲得的要因を見ると「問題解決指向」「自己理解」「他者心理の理解」の3つが
挙げられていますが、カウンセリングの中で取り組んでいくことととても近いものがあるのに気が付きます。
カウンセリングでは取り上げる問題の内容にもよりますが、ほとんどの場合、お困りごとの内容を
お聴きする中で、問題を整理して自己理解や問題と関わりのある周囲の他者について距離を取って見られる
お手伝いをし(見立てやケースフォーミュレーションなどと呼んだりします)、問題の解決方法を一緒に
考えていきます。
つまりカウンセリングは、「自己理解」「他者心理の理解」「問題解決指向」を通して、レジリエンスを
高めていく試みだとも言えるかもしれません。
また、レジリエンスの資質的要因についても、完全に資質的な物というわけではなく、後天的に獲得する
こともできると言われています。
例えば「社交性」は、自己理解や他者理解を通して、また、「楽観性」は問題を解決できた経験を通して
少しずつ育っていくこともあるでしょう。
カウンセリングを通して全般的にレジリエンスを高めることで、困難な人生を乗り越える最初の一歩と
することができるかもしれません。
参考文献(もっと詳しく知りたい人)
平野真理. (2010). レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み――二次元レジリエンス要因尺度 (BRS) の作成. パーソナリティ研究, 19(2), 94-106.
平野真理 & 梅原沙衣加. (2018). レジリエンスの資質的・獲得的側面の理解にむけた系統的レビユー. 東京家政大学研究紀要, 58(1), 61-69.
Lear More「あなたのまわりのソーシャルサポート」
以前取り上げたポリヴェーガル理論でも「社会的関わりシステム」という言葉が出てきましたが、
人間という生き物は常に集団の中にあって、人生における様々なトラブルや危機を他者と支え合い
ながら生きてきました。
そのような周囲の他者からの支援のことをソーシャルサポートと呼びます。
ソーシャルサポートが得やすい状態にある人は、そうでない人と比べて困難な状況にあっても
健康な状態を維持しやすいことが分かっています。
ソーシャルサポートには以下の4種類の機能があると言われています。
情報提供機能:問題の解決に必要な情報を提供する
情緒的機能:気持ちに寄り添ったり共感する
道具的機能:問題解決の具体的・道具的な助け
評価機能:自分の行動に適切な評価を与える(褒めたり改善点を指摘する)
あなたが困った時、どんなソーシャルサポートが思い浮かびますか?
身近な存在だと家族や親友、やや遠くなると遠い親戚や離れた友人、かつての恩師など。
SNSでのつながりは、親密さなどによって近いソーシャルサポートにも遠いサポートにも
なるかもしれません。困っている状況によって、どのソーシャルサポートが有効かというのも
変わります。意識できるソーシャルサポートがあれば、困った時に相談したり助けを
求めてみると良いでしょう。
「ソーシャルサポートがある」というのは、単に自分の身近に他者がいることではありません。
普段生活している中では、近くに家族がいて、同級生や先生、同僚や上司が居ます。
しかし、その人たちからのサポートを期待できない場合もあるでしょう。
それだけでなく、身近な人間関係こそが主要なストレス因となる場合も
私たち人間にとってはよくあることです。
仮に身近な人との関係が良好であったとしても、自分の悩みや困り事を、相手に相談したり
打ち明けたりと言うのは、それほど簡単なことではありません。
状況や悩みの内容によって、身近なソーシャルサポートを利用できないこともあるでしょうし
身近だからこそ言えないこともあるでしょう。
「こんなことを話して相手の負担になってはいけない」という思いもサポートから自分を遠ざけます。
カウンセリングはそのようなときの一つの選択肢かもしれません。
カウンセリングでは基本どんなことでも話して良く、尚且つ自分のプライベートな関係の
どこともつながっていない特殊な場所です。
悩みがあるけれども、周りのサポートが見当たらない、サポートはあるのだけれども
状況や内容のために相談することができない。
そんな時には、利用できる新たなソーシャルサポートを作るつもりでお気軽にお問い合わせください。
(参考文献:久田満・飯田敏晴(編著) 2021 コミュニティ心理学シリーズ第1巻 心の健康教育 金子書房)
Lear Moreカウンセリングは何回くらい来ないといけないの?
カウンセリング・心理療法を検討されている方によくいただくお問い合わせの1つに
カウンセリングは何回くらいやると考えておけばいいのか?というものがあります。
カウンセリング・心理療法というのは、言葉ではなじみがあると思いますが、
お受けになるのは初めて、と言う方がほとんどでしょうし、周りにカウンセリングを
やったことがあるかどうかを尋ねる機会というのもあまり無いでしょう。
お医者さんに行けば「どのくらいで良くなりますか?」と聞きたくなるのと同じように
どれくらい通ったらいいのか気になるのは当たり前のことです。
しかし残念ながら、カウンセリング・心理療法は、そのようなお問い合わせに
だいたいにせよ「何回くらい」とお答えすることが出来ないのです。
カウンセリング・心理療法を受けになる方は非常に様々なお困りごとを抱えて
お越しになります。
例えば同じ「気分が落ち込む」というお困り事であったとしても、お話を伺うと
体験されている内容はその方によって異なります。「気分が落ち込む」なら
大体このくらいで終わるかなと早合点してしまうとすれば、その予断はかえって
その方のお困りごとを理解する妨げになってしまうかもしれません。
実際には、まずお越しいただいてどのようなお困りごとがあり、また
それをどの程度解決したいのか、どの程度楽になれたらよいのか、と言う
ご要望をお聞きしながら担当のカウンセラーと話し合っていきます。
「どのくらい来ることになるのか」のおおよその目安を図るとしたら、
そのような関わりの中でになります。
このように、詳しいお話をお聞きする前に「何回くらい」とお答えすることは
非常に難しいのです。
それは認知行動療法などであっても変わりません。
認知行動療法の場合は、厚労省から発行されているプロトコルがあって
それは16セッションで構成されていますから、どうしても何回くらい来る必要が
あるのか目安を聞きたい、という場合は、それくらいを目安として
お答えすることがあります。
しかしながら実際にはプロトコルを使用するかどうかを考えたり、プロトコルを
使用するにせよプロトコルの通りに進むわけではありませんし
人によってやはり回数は様々です。
ただしその反面、カウンセラーから「何回来なさい」と回数を一方的に指定され
その回数来なければいけない、ということももちろんありません。
お越しになられた方とカウンセラーとの間で話し合って
1回で終わりになることもあるかもしれません。
まずはお越しいただいてどの程度なら来られそうか、どのくらい来たいと思っているのか
と言うことも含めて、不安に思われていることは何でも話してみていただければと思います。
Lear More行動を変えて気持ちや気分の改善を試みよう!―行動活性化のススメ―
みなさんは、気持ちが落ち込んだまま、なかなか改善せず困ったことはありませんか?
また、何とか気分を変えようと思っても、なかなか上手くいかずに苦労したことはありませんか?
今回は、気持ちや気分を変えるための方法として『行動活性化』をご紹介します。
①気持ちと行動は,どのように関係しているのでしょうか?
ポジティブな感情には、行動の範囲を広める力があります。逆に、ゆううつや不安などの
ネガティブな感情を経験すると、ずっと考え込んだり、同じ失敗を避けようとしたりして
行動の範囲が小さくなってしまいます。
そのため、ネガティブな感情を適宜ポジティブな感情に切り替えようと、人は考え、
取り組もうとしていきます。
さて、みなさんは「気持ち・気分」と「行動」のどちらが変えやすいと思いますか?
正解は➡「行動」です。
気持ちや気分は簡単には変えることができませんが、行動は比較的簡単に変えることができます。
②どうやったら気持ちや気分を変えられるでしょうか?
気分や感情が改善するのを待っていても、いつになるかは分かりません。
逆に、先に行動を変えれば、感情や気分の変化もそれについてくるかもしれません。
なので、気分にかかわらず行動することが大切です。つまり、活動することを通して
気分の改善を図っていきます。やる気が起きるまで行動をしないのではなく、
行動を通してやる気を呼び起こしていくように心がけてみましょう。
③では、具体的にどんな行動をすれば良いでしょうか?
まずは、ご自身が「過去に取り組んだことある、気分が改善した行動」を思い出してみましょう!
新しいことを探したり始めたりすることは、時間がかかったり慣れるまでに苦労が必要になってしまう。
そのため、今までやったことのある行動から選んで、取り組んでみることがポイントです。
〈何かをする行動〉
❖好きなことをする(漫画を読む、映画を観る)
❖整理整頓をする(カバンの中を整理する)
❖先延ばしにしていたことを片づける
❖人と連絡する(長らくあっていない友人に電話する)
❖運動をする(ウォーキング、ストレッチ、ヨガ、筋トレ)
❖手作業をする(掃除をする、料理をする)
❖芸術的な作業をする(絵を描く、楽器を演奏する)
〈何もしない行動〉
❖何もしない(ぼーっと空や景色を眺める)
❖リラックスする(ゆっくり風呂に入る、入浴剤を入れる)
❖暗い気分にそぐわない、実際にできそうなことをする(持っている一番明るい服を着る、鼻歌を歌う、スキップする)
❖楽しそうな人を見つけて同じ行動をする
④行動するときのポイントと注意
・すぐに簡単にできそうな、ほんの少しの小さなことをから取り組んでみてください
・具体的に,可能な範囲で,計画を立ててみてください(いつ?どこで?誰と?どのように?どこまでやるか?)
・大きくて難しそうな行動は、なるべく小さく分けて1つずつ取り組んでみてください
(例:家の掃除をする計画を立てる→机の上を片づける→ひとつの部屋を片づける)
今回は、行動活性化について少しご紹介しましたがいかがでしょうか。
何か些細なことからで構いませんので、自分の気持ちや気分が切り替えたいと思った時に
ぜひ取り組んでみてください。
そして実際に取り組んだ時に「うまく気持ちや気分が切り替えられた行動」
「喜びや達成感が増えた行動」は、これから大事にしていきましょう。
ここから、あなた自身の「オリジナルの気分転換の方法」を探していくための良いスタートが
きれたのではないでしょうか?
しかし、物事はそう簡単にうまくいかないこともあります。
「どうしても気持ちが落ち込んでしまって変えることが難しい」「たくさん取り組んでみても上手く
気持ちがきりかえられない」など、困ってしまったら、お1人で考え込まずにしてください。
ご自分1人ではどうにもならない時には、誰か周囲の人に相談する必要があるでしょう。
カウンセリングをその相談の手段の1つとしてお役に立てる場合があります。
まずは、お気軽にお電話等で当オフィスにご連絡してみてください。
Lear More新型コロナ感染症と心の悩み、夫婦関係、親子関係について
昨今は新型コロナ感染症に伴い、長時間自宅で過ごされる方が多くなっていると思われます。
出かけようにも遠くへ行くのは不安だし、感染の危険もあることから、外出を控えたり、
テレワーク等で出勤しなくなって、どうしても自宅でいる時間が長くなります。
そうなったとき、今までは適当に外で発散していたフラストレーションが溜まってしまい、
結果的に家の中に表出されてしまうことがあります。そうなると、家の中の空気が
ギスギスしてしまい、さらにストレスが溜まってしまうといったことになるかもしれません。
しかし、長時間家にいることはマイナスな影響しかないのでしょうか?
実は今まであまり家でゆっくりと一人の時間を過ごせていなかったり、夫婦や親子で顔を
合わせる時間が少なかったといった方々は結構いらっしゃると思います。
特に夫婦関係や親子関係の場合、今まで見えていなかったことが見えて、新しい発見となり、
そこからお互いの理解がさらに深まって関係性が深まるといったことを時々耳にします。
ただ、今まで外で適当に発散できたことで、あまり見ないようにしていたお互いへの不満や、
家族や夫婦の中で抱えている問題といったことが表に出てくることもあります。
そうすると、相手への不満や怒りが強くなったり、不安が強くなったりしてしまい、
強いストレスを感じるようになってしまうこともあるかもしれません。
しかしこういった状況は、自分たちが抱えている問題を自覚し、その問題に向き合うことが
できるチャンスでもあると思います。
現状への不満や不安は、現状を何とかしたい、変えたいというモチベーションに繋がりやすく、
そういったモチベーションをうまく使うことで、今まで未解決でいた問題が解決したり、
解決しないまでも取り組んだりできるようになることもあります。
そういう家族関係や夫婦関係、親子関係の問題に取り組むためには、
まずはお互いがじっくりと話し合い、お互いへの理解を深めることが必要です。
しかし、話がかみ合わなかったり、ケンカになってしまったりとなかなかじっくりと
話し合うことが難しい場合があります。そういった悩みを持った方々が、
よくカウンセリングに来られることがあります。
カウンセリングでは問題や悩みへの理解を深めるサポートをしています。
カウンセリングは問題の解決を保証するものではありませんが、理解が進むことで問題が整理され、
今後どのようにしていけばよいかについてのお手伝いをしていければと思っております。
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