アンガーマネジメントって結局どうやるの?RICPメソッドを試してみよう。
これまでもたびたび、“怒り”という感情が、いかに人間、生き物にとって大切で、
生きていくために必要かという話をしてきましたが、その一方で「アンガーマネジメント」という
言葉を度々聞くのはどうしてでしょうか?
当然ながら「アンガー(怒り)」を問題に感じる方がそれだけ多いからです。
皆さんも、日々生活をしている中で、怒りに触れて「いやだな」と感じることはたくさんあると思います。
お店の中で店員さんに怒っている人、満員電車の中でケンカが始まりそうな瞬間、もっと身近な人間関係でも、
身近だからこそ怒りに触れることはあるでしょう。そして何より、最も身近な「自分」の怒りについても、
「嫌だな、どうして怒ってしまうんだろう」とか、「こんな言い方したかったんじゃないのに…」と悩んだり、
後悔したりすることもあるのではないでしょうか。
「怒り」はこれまでも見てきた通り健全な感情ですが、「不快」な感情であることも事実です。
さらには「攻撃(暴力だけでなく暴言や、もっと間接的なものも含めて)の前兆(もしくはイコール)」と
思われているために、周りの人にとっても警戒したくなるものです。
確かに怒りは攻撃とつながりやすいものですが、本来は怒りと攻撃は別のものです。
怒っても攻撃しないことはできます。どんなに怒っていても、怒りはコントロール不可能なものではありません。
ただコントロールはできるはずだけれども、そのコントロールがとても難しいのが怒りの特徴です。
だからこそ「アンガーマネジメント」が大切だと言われるのでしょう。
6秒ルールなど様々な方法が知られていますが、結局のところは「ちょっと立ち止まる」ことが
できるようになるための方法です。
ここではRICPメソッドをご紹介します。
これは怒りを感じるのも当たり前という場面で、冷静になるためのイメージトレーニング法として、
さらには怒りの場面での実践法として活用できます。
Relaxation:リラクセーションを使ってリラックスしよう
ゆっくり深呼吸をしてみたり、あなたなりのリラックス法でまずは十分に気持ちを落ち着けましょう。
Imagery:イライラした場面をイメージしてみよう 落ち着いた気持で、最近のイライラした場面をイメージしなおしてみましょう。気持ちが落ち着いていると見えてくるもの、気が付くことがありますか?
Coping statement:コーピングの発話(適応的な考えを思いつこう)
イライラしたイメージの中で、落ち着きを維持するための考え方を見つけてみましょう。
Problem-solving response:問題解決のための方法を考えよう
落ち着いた状態で、どんなことが解決になるか、その場で怒りに任せて攻撃する以外の良い方法(相手のためにも、自分のためにも)を考えてみましょう。
ついつい疲れて帰宅した時に、期待していた家事ができていないパートナーについついイライラ
してしまうAさんは、休日、ソファに座ってまずは呼吸法で気持ちを落ち着けました。
昨日帰宅した時に、部屋が片付いていないのを見つけてカッとなってパートナーに怒鳴ってしまった
場面をイメージしました。気持ちが落ち着いているのもあって、昨日の様な気分にはなりません。
コーピングの発話を考えました。「毎日疲れて仕事をしてきているのを分かってくれていないと思ってしまったんだ。
片付けだって昨日は気にならなかったし、ましてや相手が自分を馬鹿にしてる証拠になんかならないよな。
何でも思い通りになるわけないよね。」
問題解決として、「気になるなら、落ち着いて自分でやればいい。声をかけて一緒にやってもいい。
放っておいても良い。本当に気になるなら、落ち着いて言えばいいんだ。
自分が疲れているのが問題なんだから、ひとまずお風呂にゆっくり入って疲れを取ろう。
仕事を少しセーブできないか、上司に相談してみよう」と、本来の問題に戻ってきて対処する
イメージまで思いつけました。
対応に困った怒りの場面を体験したら、上の流れで毎日毎日、何度も練習をしてみます。
そうして、もしまた似た場面に遭遇したら、落ち着いて実践するために、Relaxationから初めてみましょう。
引用/参考文献「怒りを適切にコントロールする認知行動療法ワークブック」ウィリアム・J・クナウス著
Lear More悩みごとも、まずはAIに相談を?
皆さんは日常にどの程度AIを活用しているでしょうか?
家にはAIスピーカーが居て、朝の支度をしてくれて、明日の天気や、お気に入りの楽曲を
演奏してくれているかもしれません。床の掃除はAIを搭載したロボットがこなしてくれますし、
出かける時にはGoogle Mapが様々な交通手段を網羅した、最適な経路を提案してくれます。
外国語はGoogle翻訳やDeepL翻訳に任せれば、日本語以外でのメールの返信に悩む必要はまずありませんし、
英会話を習いたければ、AIが相手になってくれるアプリが24時間会話に付き合ってくれます。
現代社会に生活する中で、AIと全く関わらずに過ごすことはあり得ない状態になっていると言ってよいでしょう。
この文章はAIを使用せずに、「手書き」で書いていますが、AIに任せてしまえば、これよりももっと整っていて、
情報の多い魅力的な文章をきっと書いてくれるはず。
AIとの会話については、誰にでも触れるカジュアルなものだと10年位前からチャットボットが
登場していましたが、当時はまだ会話としてはぎこちないし限定的で、「AIと会話っぽい遊びができる」
以上のものではありませんでした。AI翻訳もまだまだ不十分で、公的なやり取りにそのまま使用するのは
とても危ういレベルでした。
しかし、それからの10年でAIは瞬く間に進歩して、あっという間に私たちの日常に溶け込んでいきました。
ChatGPTを代表としたAIの能力は素晴らしく、作業の手間を省いていくれる助手としてだけでなく、
日常的な相談相手、一緒に考えてくれる相手、は、これ以上ない存在となっています。
AIとの会話の利点はいくらでもありますが、まずは他の人に話すのにはちょっと躊躇するような事柄でも、
何の抵抗もなく話せるということです。
これは深刻な話と言う意味に限らず、例えば「今日のご飯どうしようかな」とか、
「今日休みだけど何にもすることないな。どうしよう…」といった、「こんな小さい個人的な話を、」
あるいは「こんなまとまってない話を、」わざわざ誰かに言うのもな…といった意味合いの内容であっても、
躊躇なく聞けるということです。
またもう一つの利点として、そういった思わず頭から漏れ出たようなつぶやきであっても
「ピーマンが余っているなら炒め物、マリネ、おひたしなんかどう?」
「一人の休日には映画マラソンなんかおすすめですよ!」みたいに、面倒くさがったりせずに、
即座に明確な答えを提供してくれることです。
もちろんもっと悩ましいストレスにも、AIは即座に何かしらの答えや提案を示してくれます。
例えば、「怒鳴ってくる上司が怖くて出社したくないんだけど、どうしたらいいと思う?」と尋ねると、
すぐに5種類の提案をしてくれます。その提案の中に「相手とできるだけ距離を取る」とあったので、
「でも直接やり取りすることが多いんだよね」と言えば、さらにより状況にあった提案をし直してくれます。
そうしていると、なんとなく冷静になって、対応の方法が浮かんできたりするものです。
それはまるで誰かを相手に相談しているようでもあります。
悩みごとはまずはAIに相談するという人は、これからも増えていくでしょう。
感情に共感してくれることすら、AIはとても上手です。AIに相談することで解決する悩みが増えれば、
それだけこの世界から悩みが減っていくことになります。
皆さんも、困ったことがあったら、ひとまずAIに相談してみるのはいかがでしょうか。
解決まで求めなくても構いません。ただどんなことに悩んでいるのか、今どんな気持ちなのかを、
AIのチャットに書いているだけで良いのです。そうしてみて、それでもなんだかうまくいかないな、
しっくりこないな、と思ったら、カウンセリングを検討してみてください。
すぐに「答え」を提案してくれるAIにない発見もあるかもしれません。
それが何なのかについては、実は心理学の世界でもどんどん明確には言えなくなっていっているのですが、
言葉にできない、していない、気づかずに覆って自分自身からも隠している何か、辛さ。
少なくともそういったものを、「答え」というより、一緒に探すことは、
カウンセリングでやっていけると良いかもしれません。
※上の記事の例ではClaude無料版(https://claude.ai)を利用しています。
Lear More『知ることと意識すること』
春の花というと、みなさんはどんな花を思い浮かべるでしょうか。
『キュウリグサ』という花をご存知ですか?
3~5月頃に咲く花で、道端や空き地、アスファルトの隙間、公園など身近なさまざまな場所で見ることができます。
花びらは淡い水色で、花の中心は黄色く、とても愛らしい花です。名前からは想像がつきにくい姿かもしれませんね。
『キュウリグサ』という名前の由来は、葉をもむとキュウリのようなにおいがすることにあるそうです。
ただ、これほど身近にある花ですが、あまり知られていないのではないでしょうか。
キュウリグサの花は2~3㎜程度ととても小さいのです。そのため、身近にはあるけれど
、なかなか気づかないかもしれません。
かくいう私も、『キュウリグサ』という花の存在を知るまでは、こんなに可愛らしい花に気づかずに
ずっと通り過ぎていました。しかし、花の存在を知ってからは、春は私の中ではキュウリグサの季節でもあり、
今ではすぐに見つけることができます。
意識すると、世界や日常の風景の見え方が変わります。
今まで見えていなかったものが、目に入るようになります。
それはカウンセリングでも同じです。
自分の体験や感情を言葉にしていくことで、今まで気づかなかった自分に気づくようになったり、
これまでとは違った見方や捉え方ができるようになったりします。
そうすると、自分自身が少しずつ変化していきます。
自分についてより深く知り、自分と向き合うことは、いつも新鮮で面白い体験になるとは限りません。
しかし、寒く厳しい冬を乗り越えて、春になると花が開くように、乗り越えたその先に、
必ず何か実りや得るものがあることでしょう。
Lear Moreごほうびを上手に使ってできない行動⇒習慣に
2025年となりました。新しい年を迎えて、今年の抱負や、今年こそはこうだったらな、と思うことが
皆さん何かしら一つはあるのではないでしょうか。
しかし、そのようにして思い浮かぶことは、大体は去年も同じようなことを思っていたものであることとも
多いはずです。
これまで、新しい行動を獲得するための記事をいくつか書いてきましたが(行動活性化)、
行動を定着させるためには心理学の中では「ごほうび」が重要と言われています。
心理学の専門用語でごほうびは「強化」とか「強化子」と呼ばれており、
古くから、「新しい行動を定着させるための要因」として知られています。
強化には「自然な強化」と「意図的な強化」があると言われています。
自然な強化というのは、行動をすることによって自然にご褒美が得られることです。
例えば唐揚げを食べたらおいしい!とか、気になっていたマンガの続きを買ったらおもしろかった!とかです。
しかし、今年の抱負にするような行動というのは、大体がそのように自然な強化が
得られるものではないか(家の掃除とか“運動する”とか)、得られるとしても苦労の
果ての果てにご褒美がある(○○試験のために勉強する!とか)ものがほとんどです。
そのような自然な強化が得られない時には「意図的な強化」が有効です。
これは「○○ができたらご褒美にケーキを買おう」というもので、自分でご褒美を決めて準備をして、
自分をほめたり、甘やかしたりすることです。
このようなご褒美は何となく誠実じゃないと感じたり、ごほうびがなければやらなくなるような
気がして長期的には意味がないと感じるかもしれません。けれど大切なのは、それによって
数回は行動が生じることです。数回の行動が生じることで、その行動が自分にとって必要な
行動なのであれば、その中に多少なりとも「自然な強化が得られる」体験が見つかるでしょう
(掃除をした後は気持ちが良い、勉強すると理解ができる)。
確かに意図的な強化は準備する面倒がありますが、行動することで自然な強化に気がついてくると、
意図的な強化と自然な強化の相乗効果で、ぐっと行動が定着しやすくなります。
ですので、意図的な強化によって行動をしてみたら、その行動の中に自分にとってのうれしい
効果がないか、気にしながら取り組んでみると良いでしょう。
もし、自然な強化が得られなかったとしたら、その行動が本当に自分にとって必要なものか、
考え直すきっかけにもなることもあるかもしれません。
さて、皆さんも「意図的な強化」を遠慮なく使って、今年の抱負を設定してみましょう。
Lear Moreカップル間の要求/撤退パターン
カップルや夫婦、パートナーとの関係がうまくいかない。
パートナーのせいで負担を強いられている、という悩みを持ってカウンセリングに来られる方がいます。
夫婦関係の問題は非常に古く、古代ローマの時代から夫婦喧嘩を守護する女神が居て、
古代ローマ人の夫婦は、お互いに不満が溜まってくると、二人で女神の祠に向かったと言います。
その女神の祠には「女神の前ではどちらか片方ずつしか口を開いてはならない」というルールがあったのだそうです。
しかしこれは、昔の人間を知るほのぼのとした逸話というよりは、それくらい古くからパートナー関係の維持は困難で、
人生の悩みの主題となり続けてきたことを示しているのでしょう。
最近の研究の結果としても、結婚一年目をピークにして、パートナー関係は歳を追うごとに、
残念ながら、基本的には悪化していくことがわかっています。
そこで近年、「カップル間の要求/撤退パターン」というパートナー関係のある悪循環に焦点を当てた
カウンセリングが注目されています。
カップル間の要求/撤退パターン
夫婦関係の研究では古くからよく知られた現象で、カップルの一方が他方に強く要求・批判し
もう一方がそこから守りに入ったり引き下がるというコミュニケーションのパターンのこと。
(三田村研究室 X @Mitamura_Lab より引用)
上の三田村研究室での一連のポストをお読みいただいた方が早いのですが、カップルが男女であった場合、
女性が要求側、男性が撤退側になることが多いことが、古くから確かめられてきたと言います
(それがどうしてなのかなど、こういったことが色々ポストされていて、学びになる上に
とても興味深いのでフォローおすすめ)。
いずれにせよ、このパターンが繰り返されていくと、次第に関係性が悪化していくという典型的な流れがあるようです。
さて、そこで関係性を改善していくために大切なのは、カップルの中でこのような構図ができていることは、
純粋にどちらか一方が「要求や批判ばかりで悪い」あるいは「逃げてばかりの態度が悪い」
ということではないと言うことです。
あくまで二人の関係性であって、そこに「どちらが悪い」は存在しないと言うことです。
全く異なる2つの態度ですがそこには1つの共通点があり、ある意味では二人で一緒に、その関係性を作っています。
その共通点とは、相手の表面的な感情に翻弄されていることです。
これまでの研究で分かってきていることは、カップルの関係性を改善していくときに、
どちらか一方だけが変化する、または「こういうルール作ってそれを守りましょう」、ということは
根本的な解決にはならず、お互いの内面、「本当はどういう気持ちがあったのか」ということをお互いに気が付き、
自然に相手への思いやりが浮かぶような関係性を構築することです。
お互いを見るときに、怒っているけどそれはどうしてだったのか、その背後にはどんな気持ちがあるのか。
黙っているけどその背後にはどんな気持ちがあるのか、そこに目を向けてみましょう。
「怒り」「無感情」とは全く違った気持ちが、そこにはあるのかもしれません。
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