怒りと上手に付き合う「アンガーマネジメント」
ここ数年、芸能人や政治家が自分の問題を改善するために取り組んでいることが
ワイドショーなどでも取り上げられ、何かと耳にすることが増えてきた「アンガーマネジメント」。
TVに取り上げられるような大きな事件やトラブルになることは無くても、
人と喧嘩や言い合いになってしまいやすい、そこまでするつもりはなかったのに相手を非常に強く叱責してしまう、
と言った経験に悩んでおられる方もおられるのではないでしょうか。
怒りへの対処法は「アンガーコントロール」「アンガーマネジメント」など様々な呼び方がありますが
これらは、いつでも怒りをオフにできる、とか、全く怒りを感じない人間になる、ということを
目指すわけではありません。もともと怒りは脳の本能的な反応で、他の感情と同じく必要なものです。
怒りを全く感じなければ脅威から自分を守れなくなってしまいます。もちろん、怒りの感情を抑え込める
ようになることを目指すわけでもありません。
体験されている感情を無理やり抑え込もうとすることは、かえって気持ちを落ち込ませたり身体にも余計な
負担がかかってしまったりと、あまり良くないことが分かっています。
無理に怒りを抑えるとうつ病になりやすくなる、と言った報告もあります。
「アンガーコントロール」「アンガーマネジメント」の目的としては「怒りの感情と上手に付き合う」と
いった表現があり、感覚的にも理解しやすいのではないかと思います。
怒りの対処法について、Meichenbaumは以下のようなステップをあげています。
①認知的準備期:怒りが喚起される状況の前と最中の考え方を、合理化、組織化する。
②スキル習得期:アサーティブトレーニングやソーシャルスキルトレーニングなどを通じて
状況に異なった方法で対処することを学ぶ。
③適用訓練期:学んだスキルを想像、ロールプレイ、あるいは実際の場面で実践に移す。
怒りの対処法については現在様々な方法が発展してきていますが、その多くが最初のステップとして
「怒りに対する認知=考え・考え方・信念」へのアプローチを取り入れています。
怒りの状況や自分がどうしてその時に怒ったのかということについて客観的に見られるように
なっていくということです。怒りを感じた当初は「怒らせた相手が悪い!」としか考えられないかも
しれませんが、怒りはあくまでも自分の中で起こっているものです。
そこにはあなたが持つ独特の「考え方・信念」があるかもしれません。
アンガーマネジメントに関しては、沢山の本が出ておりますので、お手に取って読んでみるのも良いでしょう。
引用文献:
清水栄司. (2018). マンガでわかるアンガーコントロールガイド. 法研.
エマ, ウィリアムズ, レベッカ, バーロウ. (2012). アンガーコントロールトレーニング: 怒りを上手に抑えるためのステップガイド. 星和書店.
OZAWA, Yuri, et al. 感情制御とマインドフルネスがアンガーマネジメントに及ぼす影響.
ぐるぐる思考、考え込むことをやめられないのはなぜ?
人間は他の動物と比べて考えることが非常に上手な生き物です。
しかし、時に考えることが止まらなくなって、同じような、考えても仕方がないような
ことをぐるぐると考え込んでしまうことがありませんか?
「どうして自分はこんな風になったんだ」
「あの時、もっとああしておけば良かったのに」
「来週の発表がうまくいかなかったどうなってしまうだろう」
「もしあの人に嫌われたらどうしよう」
「これから先うまくやって行けるのだろうか」
など、済んでしまった過去のことや、もうこれ以上考えても仕方がないような未来のことを
考え込んでしまったりします。そうすると、気持ちはとても落ち着かなくなります。
もし眠ろうとしているところだったら眠気はどこかへ行ってしまい、
仕事中であれば仕事は手につかなくなってしまうでしょう。
こういったぐるぐる思考のことを、心理学では「反すう(rumination)」と呼んでいます。
反すうは、抑うつや不安、それ以外のストレスと強く関連しており、反すうをすることによって
落ち込みや不安な気持ちがより強くなったり、そのような辛い気持ちが持続しやすくなったりします。
日常的に反すうを行う人の中には、反すうが「役に立つ」、または「それをしないともっと悪いこと
になる」といった間違った認識を持っている場合があることが分かっています。
当たり前だと思ってやっているその「反すう」が本当に自分の役に立っているのか、
少し距離を置いて客観的に、見直してみるのもよいでしょう。
有名なプレゼンテーション番組TEDでも、この反すうについて取り上げたプレゼンがあります。
反すうをどのように扱っていけたらよいかのヒントが得られるかもしれません。
もし、自分一人では反すうを止めることが難しいと感じたら、当オフィスまでお気軽にご相談ください。
Lear More“ストレス”から自分を知る
“ストレス”と聞くとどんなことを思い浮かべますか?
多くの人は、嫌なことや辛いことを連想すると思います。しかし、昇進や結婚、出産など喜ばしい
出来事も大きな変化の節目であり、心や体に負担をもたらします。
そもそも“ストレス”とは、「心や体に負担がかかっている状態」のことを言い、ある刺激や誘因が
きっかけとなって生じる緊張状態でもあります。刺激や誘因とは、たとえば先程あげた喜ばしい
出来事もそうですし、そのような大きな変化だけではなく、日常の社会生活や人間関係、取り巻く環境、
自身の体調や悩みによっても大なり小なり心身に負荷がかかります。そして、その負荷が大きくなると、
私たちの心や体は様々なストレスサインを示してSOSを発信します。
日常の生活を営むためには、小さな負荷はあまり意識されませんし、気付いたら忘れているということも
多々あります。しかし、無理に誤魔化したり、なかったことにしている「実は辛い」「本当はしんどい」
という思いは、そのままにしておくと苦痛になり、心や体、行動を通してストレスサインとして表れてきます。
心であれば、不安やイライラ、落ち込み、意欲低下、身体であれば、頭痛や食欲不振、不眠などがストレス
サインとして表れます。また、行動であれば、身だしなみの乱れ、遅刻などがあげられます。
ただ、これらはごく一部の例で、どのようなストレスサインが生じるかは個人の傾向があります。
自分の場合どのような反応がよく出やすいか、知っておくだけでも心身の負荷を自覚しやすく、
早く対処することができるでしょう。
また、個人の体力や素質、性格などの個人差によって、心身への負荷の程度は違ってきます。
体力のある人とない人では、同じ作業量でも疲労感は違いますし、個人の考え方や感じ方など性格的な傾向
によっても負荷は変化します。
たとえば、新しいプロジェクトを任されるという出来事について、「期待されている。今やれることを頑張ろう」
と意気込むことと、「期待されている。だから、失敗せずに期待に応えないといけない」と意気込むことでは、
同じプレッシャーでも後者のほうがプレッシャーをより強く感じ、負担を抱えることにもなりかねません。
体力や物の考え方や感じ方は、人によって違います。何をどんな風に体験しているのか自分の傾向を知っておくことも、
ストレスの緩和に役立ちます。
ストレスを感じた時に、対処することや心身をケアすることをセルフケアと言います。
自分がどんな風に出来事を体験しているか、負荷を感じているか、反応しているか、どんなふうに対処しているかなど、
いろんな側面から幅広く自分を知ることはセルフケアにもつながります。そして、そのような自己理解を通して、
心身ともに柔軟性を取り戻し、環境への適応力を回復していくセルフケアに一緒に取り組んでいけるのが
カウンセリングでもあります。
悩みを抱え、行き詰まりを感じている時は、心身の柔軟性が硬直して身動きが取れなくなっています。
カウンセリングでは、悩んでいることからじっくりお話しを伺い、自己理解をサポートしながらどうしていけば
よりよく過ごせるかカウンセラーが一緒に考えていきます。
どんなお困りごとでも構いません。一度、カウンセリングの扉を叩いてみませんか?
Lear More上手な伝え方・・・アサーションって?
皆さんは伝えたい気持ちをちゃんと伝えられていますか?
言いすぎて反省したり、我慢してしまって後悔したり・・・といった経験は誰しもあるのではないでしょうか。
今回は、自己表現の3タイプと上手な伝え方「アサーション」についてお話したいと思います。
自己表現の3タイプ
人の自己表現には、3つのタイプがあると言われています。
レストランでの場面を例に、それぞれのタイプをみてみましょう。
ずっと食べてみたかった評判のミートソーススパゲッティを注文し、楽しみに待っていたとします。
店内は混んでいてスタッフもせわしなく動いています。さあいよいよ運ばれてきた・・・と思ったら
テーブルの上に乗せられたのは和風の明太子パスタ。それがどんなにおいしいものだとしても、もう頭の中は
ミートソースでいっぱいです。「ご注文はおそろいでしょうか?」店員さんが聞いてきました。
①自分優先タイプ
・・・相手の気持ちを無視・軽視して、自分の主張をおしつけて攻撃的な表現をするタイプ。
②他者優先タイプ
・・・自分の気持ちや考えを表現しなかったり、しそこなったりするタイプ。
③アサーティブタイプ
・・・自分も相手も大切にして、率直に自己表現をするタイプ。
上手に気持ちを伝える方法 アサーション
皆さんはどのタイプの表現をすることが多いでしょうか。
③のように「自分も相手も大切にした率直な表現方法」を「アサーション」と言います。
上手に活用するとお互いに気持ちのよいコミュニケーションができるかもしれません。
アサーションを実践するための方法には 「みかんていいな法」があります。
伝え方の流れである「見(み)たこと→感(かん)じたこと→提(てい)案→可否(いな)」
それぞれの文字の一部をとって「み・かん・てい・いな」となっています。
さきほどの例も「みかんていいな法」を使うと、以下のように整理することができます。
(レストランの例)
おまけ(お礼・謝罪) すみません
み:見たこと・状況 私が頼んだのはミートソースです。注文したものと違うようなので
かん:感じたこと 作り直していただきたいのですが
てい:提案 新しく作って
いな:可否を問う もらえますか?
ちなみに、みかんの前にはおまけの「クッション言葉」を付けるのがおすすめです。
いきなり本題の主張に入るよりも「すみません」「ありがとう」等の一言が添えられると
相手の方も耳を傾けやすくなることでしょう。
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どうして先延ばしをしてしまうのか
先延ばし=procrastinationは、心理学の中でも昔から繰り返し研究されてきました。
先延ばしには肯定的な面と否定的な面があると言われています。
先延ばしのこころへの影響
先延ばししている最中は、本人にとって肯定的な影響が得られます。
嫌なことを忘れられたりリラックスできたりします。
しかし、先延ばしは先延ばしが終わった後に
否定的な影響が出てくる傾向があると言われて
います。先延ばしをしている間は嫌なこと、
苦しいことを忘れることができますが
その分、後になって
「あの時ちゃんとやっておけば」と
後悔したり時間が無くなって慌てたりしてしまうといったことに繋がるのです。
また、先延ばしの否定的な影響は、先延ばしが繰り返されるほどより強くなっていく
ということが明らかになっています。
肯定的な先延ばしもある
一方でネガティブな結果に陥りにくい先延ばしもあることが分かっています。
「active procrastination =積極的先延ばし」と呼ばれるこの先延ばしは、簡単に言えば
「ギリギリに短時間で詰め込んだ方が集中できるんだ」と思って積極的に先延ばしを選択することです。
まだ期限まで余裕のあるしばらくの間は、仕事に手を付けないのは普通の先延ばし(受動的先延ばしとも呼ばれます)
と同じですが、先延ばし後であってもネガティブな影響を生じず、期限までにきちんと作業に取り組むことが
出来ると言います。やりたくないからと思って結果的に先延ばしてしまうのではなく、先延ばしを
1つの戦略として使っているとも言えるかもしれません。
先延ばしするクセをなくすには
肯定的な先延ばしもあるとはいえ、一般的な先延ばしは繰り返すほどに否定的な影響が強くなりますから、
その流れをどこかで断ち切ることができると良いに越したことはありません。
まずはやるべきことを、いつどのようにやるかを明確にすることが大切です。「とにかく家のことを頑張る」だと、
なにをどう頑張れば目標を達成したことになるのかが曖昧で行動を起こそうと思えません。
「テーブルの上を片付ける」など、まず具体的な第一歩を設定しましょう。この時注意するべきなのは
いきなり高い目標を設定しないことです。
「先延ばし」は意外にも「完璧主義」の人に多いと言われています。完璧主義の人は目標を知らず知らずに
高く設定し過ぎてしまうために、最初の一歩を非常に重く感じられてしまうところがあるようです。
先延ばし癖のある方は、自分が設定した目標を「こんなに低くていいの?」と感じるくらいに小さく
感じられる目標にしてみましょう。すると、最初の一歩が踏み出しやすくなるかもしれません。
こまち臨床心理オフィスでは来談者様のお困りごとをお聞きして
その方に合ったカウンセリングの方法をご提案いたします。
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